「祇園ささ木」が祇園北側のわずか5席の小さなカウンターで料理を供したのは、1998年のこと。次の10席の少し広いカウンターの店に映ったのが2002年。その後、いまの建仁寺南側の一軒家に店を構えたのが2006年です。8年の間に祇園で二度も移転し、その都度大きくなったのは「祇園ささ木」だけです。
主の佐々木浩さんは、常に現在の料理にとどまることなく、いつも前進することばかり、そしてお客さまに喜んでおられることばかり考えています。
16席のカウンターで繰り広げられる佐々木浩さんの姿は「佐々木劇場」と呼ぶに相応し演技です。そこから生まれる種々の料理は、従前の京料理の領域を飛び越えるものもあり、いつもエキサイティングな印象です。
しかし、「日本料理の華は椀物です」ときっぱり話す佐々木浩さん。毎月の椀物にかける覚悟は見事なものがあります。
椀自体の文様から季節感をたっぷり盛り込んだ毎月の椀を味わうだけでも、日本料理の組立が理解できるというものです。
僕は開店以来、ずっと「祇園ささ木」の料理を食べつづけ、また毎年海外にも一緒に出かけたり、国内でも共にテーブルを囲むことが多いのです。つねに変化と進化、そして成長する料理人・佐々木浩さん。
しかし、椀に向かう姿勢・姿勢は揺るぎなきものがあります。そんな佐々木ささんの椀を通して日本料理を表現するさまを毎月描いてゆきたいと思います。お付き合いください。