睦月の煮物 第1回

鯛とかぶら 自家製厚揚げ豆腐」

今回から始まる「ささ木の煮物」。
「真冬の京北町の小かぶらは甘いです」と佐々木は、小かぶらを八角に面取りしながら話した。
八角は末広がりを象徴し、亀甲模様にもつながっているのだ。



鯛は血抜きもせず、ぶつ切りにする。「そのほうがうまみが乗ってきます」とのことである。
その鯛に塩をふり、炎で炙る。



豆腐は200度の油で表面がこんがりキツネ色になるまで揚げる。
これを煮込むのだが、出汁はみりん、醤油と砂糖。ここでじっくり豆腐に味を含ませる。



カツオと昆布の出汁に昆布と鯛の頭を入れ、より鯛の味わいを濃厚にする。
そこにかぶらを入れ煮込む。
「煮込みは出汁の味を素材に移すことですから」と佐々木は説明した。
鯛の味をかぶらに移すことが今月のテーマでもある。



かぶらに火が入ると同時に鯛の出汁のうまみがじんわりと入っているのだ。
その出汁はかぶらを取り出したのち、一旦火を止め、余熱で鯛に火を入れる。



これで今回の役者は揃った。
やや大ぶりの鉢の中に鯛、かぶら、厚揚げ豆腐を盛り込む。
黄ゆずの細切りを乗せて完成となる。
出汁の味わいを含んだかぶらは噛み締めるとうまみがじんわりと口の中に広がりを見せる。



厚揚げ豆腐も同様の感覚を覚える。
これを食べるとつくづく日本の出汁の力を感じてしまうのである。
出汁の役割は、出汁を媒介として素材を美味しくする液体なのだ。
思えば、出汁だけをそのまま飲むことはない。



椀物にしても椀種があって初めて成立する。
むしろ素材の味を引き立てるという点では、煮物という調理法は、優れているようにも考えることができた。

煮物をテーマにこれから一年間展開する。
佐々木浩の新たな世界が楽しめるはずです。