弥生の八寸 第3回

「蛤の貝合わせ」

「3月5日は啓蟄。
啓蟄とは、「啓」は「開く」という意味。「蟄」は「虫などが土中に隠れ閉じこもる」意で、
大地が暖まり冬眠していた虫が春の訪れを感じ、穴から出てくる頃を示す。
春がやってきたことの表現である。
そんな3月、佐々木は蛤を選んだ。
4月には産卵を迎えるため、3月がもっとも身が太くおいしいころ。
また、ひな祭りに食べると良縁を呼ぶとも言われる。

蛤を器に見立てる。
そこにおめでたい料理を盛り込んでゆく。
サーモンの白酒焼きは、清酒の華やかな香りをまもい、ふっくらと焼き上がる。

鰆の南蛮漬け 辛子蓮根。
南蛮漬けの酸味と 蓮根のシャキシャキ感が見事な相性を示す。

あん肝と百合根。
ねっとり、さっくりこの差異が面白い。

竹の子の含め煮 木の芽。それぞれが表現するほのかな苦味が春を感じさせる。

牛肉のたたき ちり酢かけ。
牛肉の豪華な感じもプラス。

菜の花辛子和え いりゴマ。
これはしっかり味を含ませる。

ふきと干しこのこのあぶり。
このこのコクと旨味のハーモニーが生きる。

赤貝のてっぱい。
日本のルーツを訪ねるような味わい。

ちらし寿司は錦糸卵、カニの身、いくら、きぬさやが入る。
それらが一同に並ぶ光景は圧巻である。
蛤の形は美しくそろう。
盛り込まれた料理が一つひとつ光を放つ。

春。
木々が芽吹き、ゆったり休んでいた虫や動物が動きはじめる。
そんな季節の変わり目を、このような貝合せで表現する佐々木は
「どこまでも日本料理は季節をいかに演出するかにかかっていますから」と話した。
佐々木の春が始まりをみせる。