師走の八寸 第12回

「冬の情景」


先月の吹寄から、冬本番である。
冷たい風がに雪が加わり、京都の街は白い化粧を施すようになる。
北の山々はすっかり白くなり、それが街にもそこしずつ降りてくる。
京都には「比叡おろし」という言葉がある。
これは比叡山から冷たく乾いた空気が市内にふき、底冷えを呼ぶのである。
「冷たい風が吹き、庭が白く染まり、そこに季節の花がポッと咲いている
ような光景を思っていただければうれしいです」と佐々木は話す。




氷を敷き詰めた器をまず用意する。
鮭はマリネをして軽く火を入れる。 柚子は皮を甘く炊く。
あんぽ柿もくるっと巻き形を整える。
ひしがには火入れをして身をほぐす。
イカはこのわた和えだ。
鴨はタレ焼きで山椒の風味を添える。
小蕪には金山寺味噌だ。
これで役者は揃った。



佐々木は、真っ白な舞台に役者を一つひとつ慎重に配する。
役者が揃ったところで、雪などの演出を仕掛ける。
真っ白な舞台が一瞬にして彩り豊かなになり、
そこには佐々木ワールドが広がっている。
京都人なら見慣れた風景かもしれない。
そこから思い起こすことも多いだろう。
雪という自然の贈り物に私たちは、切なさや儚さをも感じる。
そのような情感の移ろいが料理には込められている。



それぞれの味わいは、しっかり味が載っている。
まさに酒を呼ぶ味わい。
酒肴である。
先付で食べる準備が整ったところで八寸は供される。
どれから手をつけようか。
酒との相性も考えながら箸を伸ばす。
その行為も八寸の楽しみである。
鴨のタレ焼きの濃密な味はずっと舌を興奮させていた。
海山里の産物が同居する。
個性豊かで、一品ずつ酒の味わいも変化する。
極端なことを言えば、一皿ずつ酒を合わすことも可能である。
これもまた日本料理の深みとも言える。



今年は八寸というテーマで毎月展開してきましたが、
八寸はまさに季節の賜物であり、
料理の中でもどのタイミングでサーブするかによっても
演出は大きく異なる。
器の選択も自由自在、そこにも作り手の思想が如実に反映される。