霜月の八寸 第11回

「吹寄せ」


吹寄せとは、様々な木の葉が一か所に吹寄せられた様子に
似ているところからつけられた秋の料理の一種である。
それが高じて何種類かの野菜の揚げ物や魚介類を、
盛り合わせた料理を指すことも多い。
「これは秋には欠かせない一皿です。晩秋の情景が浮かんできます」
と佐々木は盛り付けながら話す。おそらく佐々木の脳裏には、
これまで何十年と見続けてきた数々の紅葉の
シーンが駆け巡っていたのであろう。




マナガツオの味噌漬けは杉板焼き
菊名としめじのおひたし
秋さばの小袖寿司
ムカゴの真蒸
栗きんとん
サツマイモは銀杏の形
レンコンせんべい
車海老の信楽揚げ
ひすい銀杏
松茸のフライ
柿たまご



という秋を代表する食材がずらりと並ぶ。
信楽揚げとは塩味のないおかきを衣にする。
仕上がりが信楽焼きに似ていることから。
柿たまごは、うずらの卵を柿に見立てた料理で色どりが重要である。



さあ、これら一つひとつの料理が揃った。
吹寄せを構成するパーツは準備ができた。
杉板焼きは、まだ微かに煙が流れる。
さて、これらをどう盛り付けるかが料理人の真骨頂である。
全体は秋の色合いが濃厚に出ている。
味わいのバリエーションも豊かである。
松茸のフライは香りと味を閉じ込めた逸品といえる。
松茸を食べる料理としては、最も香りが楽しめるのではないかと思う。
秋さばの小袖寿司は、さばの適度な脂分がうまく和らいでいる。



吹寄せにふさわしい、秋の木の葉をあしらうことで、
秋の景色と気配が表現される。
そこで感じたのは日本語の「捨て色」という言葉である。
これはある色を鮮やかに見せたりする、目立たない色のこと。
この「吹寄せ」は、秋の黄色や紅色が基調となっている。
それぞれ控えめながらも全体には、すごく調和がとれ、
それが味わいにも繋がって行くようなのである。
じつは捨てたようにさりげなく施すことによって、
一皿のバランスが見事に成り立って位いるように感じるのであった。
微妙な色の配置が佐々木の美学を現している。